2月からClaude Codeを使い始めた。ターミナルから使えるAIコーディングエージェントで、コードの読み書きから実行まで自律的にこなしてくれるツールだ。前回のAgentic Codingの記事でも触れたように、仕様から実装まで任せられるようになってきている。使い始めて数週間、うまくいくパターンが見えてきた。一言でいうなら、Claudeをチームメンバーとして動かす意識を持つかどうかで、結果が大きく変わる。
バックログとドキュメントで共通認識を作る
思いついたことはとにかく起票する。実装中に別対応が必要になったものも、その場でチケットに起こしておく。これを徹底したことで、作業中に「あれもこれも」と頭が散らからなくなった。積み上がったチケットは重要度と前後関係で並べ直し、優先順位を明確にしながら進める。バックログの整理は、チームの足並みをそろえる作業とまったく同じだ。
CLAUDE.md に意図を、SPEC.md に仕様を書くようにした。これで人間もClaudeも迷う場面が明確に減った。「このプロジェクトでは何を大事にするか」「この機能の仕様はどうなっているか」が参照できる状態にあると、指示を出すたびに説明し直す必要がなくなる。新しいメンバーにプロジェクトの背景を渡すドキュメントを書く、という感覚に近い。
アプリの処理フローが複雑になってきたタイミングで状態遷移図を作ったのも同様の効果があった。どこが複雑なのかが一目でわかる。コードを直す前に「そもそもこの状態遷移をシンプルにできないか」という観点で考えられるようになった。
テスト・計測で品質の基準を揃える
TDDを取り入れると、Claudeが実装中に不具合を自発的に見つけて対応してくれることが増えた。「このテストパターンだとこのケースが漏れていないか」と指摘もしやすくなる。共通のテスト基盤があることで、品質の議論が「感覚」から「事実」になる。
E2Eテストも同じ文脈で導入した。UIの挙動を変えたときの品質が担保できるし、エラーが出たときに「E2Eの何番がこけている、エラーメッセージはこれ」と伝えるだけで話が早い。再現手順を言葉で説明する手間が省けて、対話のテンポが上がった。
計測を徹底したことも大きかった。処理速度やレスポンスタイムを実測するようにしたことで、人間は「体感遅い」、Claudeは「理論上はやい」と違う基準で話していたのが、実測値で一本につながった。共通の基準があると、議論の質もコードの質も変わる。
振り返りとコミュニケーションで精度を上げる
RETROSPECTIVE.md を作り、作業ごとに「良かったこと・伸びしろ・ネクストアクション」をまとめるようにした。振り返り用のスキルをClaude Codeに登録しておき、まずClaudeに下書きを書かせる。それを読んでフィードバックを出す、という流れだ。ネクストアクションのうちドキュメントで対応できるものはその場で更新、実装が必要なものはissueを立てて次に回す。振り返りを回すほどドキュメントが育ち、Claudeへの指示精度も上がっていく。
着手前に「作業手順や仕様で質問はある?」と聞くようにしたのも効果があった。実際に仕様の確認が返ってきて、自分の考慮が足りていない部分だったこともある。「着手したら実は仕様が曖昧だった」を事前につぶせる。チームでいえば、タスクに取り掛かる前のちょっとした確認と同じだ。
言葉の選び方も変わった。「根治」「徹底的」「念入りに」という言葉を使うと、ソースコードを探索するときの精度が上がった気がする。「根治」は特に効いた。不具合に遭遇したとき、その場しのぎで終わらせずに原因を取り除きにいってくれた。強い命令口調より、方針を示す言葉のほうが意図が伝わりやすい。
チームでのコードレビューと同様に、実装が一段落したら必ずレビューを挟む。Claude Code の /review コマンドはいい感じに不具合を拾ってくれる。/simplify は冗長なコードを整理してくれるが、コードを壊す可能性もあるので慎重に使っている。
雑感
振り返ってみると、ツールの方向性を示し続けるプロダクトオーナーとしての比重が大きかったと思う。一通り実装してPRを作ったら振り返り、次に何をしたらよくなるかを考える。そして次の振り返りで試した結果を確認する。Claudeが爆速で走れる状態を作ることがとにかく楽しかった。
この感覚は、スクラムマスターとしての経験が活きていると感じた。障害を取り除いてチームが動きやすい状態を作る、という役割がそのまま当てはまる。Claude Codeとうまくやるコツは、開発チームをうまく動かすコツと根っこが同じかもしれない。
今回はRust + Tauriという自分にとって未知の領域で試したが、知らない言語でも計測手段とゴールが揃っていれば任せられることがわかったのは収穫だった。ただし未検証の部分も残っているので、引き続き使いながら確かめていくつもりだ。
結局のところ、AIとうまくやるコツは、チームとうまくやるコツと同じだった。共通認識を作り、基準を揃え、振り返りで改善する。その繰り返しだと思う。